Dialog EX
AKIBE
DEBO
アイヌ文化継承者/プロデューサー
秋辺デボ(秋辺日出男)
PRISM CO., LTD.
SHINTANI
NOBUYUKI
株式会社プリズム
代表取締役社長
新谷暢之
FUJIOKA
CHIYOMI
札幌ウポポ保存会所属
アイヌ刺繍作家・デザイナー
SHINADA
AYA
コンテンポラリーダンサー
今年もプロジェクションマッピングを担当させていただいたさっぽろ雪まつりですが、小樽の銀鱗荘がモチーフの大通り8丁目雪のHTB広場の大雪像はおかげさまで大盛況となっています。(現在は終了)
プリズムがプロデュースしている雪まつり会場でのステージも今年で3回目になりました。アイヌの方々とのコラボに取り組んできまして、昨日本番が無事に終わったところです。今日はお忙しい皆さんに時間をつくっていただき、出演と演出をいただいた3名の方々に来ていただいています。
昨年も参加いただきました、総合演出の秋辺デボさんとアイヌ伝統舞踊の踊り手と唄い手の「チームピリカプ(プは小文字)」リーダー、藤岡千代美さん、コンテンポラリーダンサーの品田彩さんです。本日は感想など伺っていきたいと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。
今年は暖かくて雪が少ない異例の雪まつりの環境でした。平日金曜の夜が本番ということで人が少ないかと心配しましたが、ふたを開けたらすごい人で。ステージをやっているときも大盛況でホッとしていました。週末にいたっては行き交うのも大変なくらいの人出になってますので、雪まつりはやはり人気があるなと思います。
デボさん、今年の公演を終えて一夜経ちましたけれども、昨年・一昨年に続き出演していただいた感想をお聞かせください。
まず皆さんの協力のおかげでステージを務めることができました。ありがとうございました。今年はこれまでとはちょっと考え方を変えましょうということで、咋年は針山さん、一昨年はケントモリさんと共演して良い思い出と経験になりましたが、それが次に繋がる機会がないなと俺は思ったし、テーマを決めてステージを継続したいっていう思いが強かったの。そこで今回から社長にお願いして、地元のアーティストとアイヌがコラボすれば、今年も来年もさ来年も続けやすいんじゃないかと思って提案しました。それともうひとつつけた条件は、練習させてくれ、と。去年も一昨年もリハが前日で、一生懸命やったけど、練習不足というのも否めないなと思ったんですね。なので今年は練習もたっぷりやらせてもらいました。
俺は本番はスタートのときの声出しやったあとにすぐ着物脱いで、お客さんの会場のど真ん中に行って観てましたが、いやー、いいステージでしたよ。自分たちでつくって演出もしたんだけれども、自画自賛じゃなくて本当に良いステージになったもんだ、もっと進化させたいと思いました。ひとつひとつの踊りのレベル・質もあげたいなと。でもやっぱり舞台というのは、演者さんのものなんだな。演出のものではない(笑)。
やっぱり彼女たち、彼らのおかげで良いものができたと思ってます。
そうですね、終わってみて「もっと踊りたい、またこの公演をしたい」という想いが募る舞台だったなって。なぜかというと、私はアイヌの古式舞踊から入っていてアイヌの踊り以外の表現とご一緒することがこれまでなかったんです。私たちの表現をたくさんの方に向けて発信ができる舞台で、皆さんに振り付けしてもらったものを踊り、デボさんが思い切り崩した舞台をつくってくれた(笑)これが私たちが目指しているところかなと思いました。
きっとそういう新しい表現やコラボレーションをみんなしたいんですね。でもそれをしていいのかがわからないっていう想いを根っこに持ちながらやっている。私は、こういう環境と発信の仕方があるんだったらどんどんやりたいと思っています。
プリズムは基本的に映像・音響・照明などの技術の会社なので、舞台を数多く観てきているんですよね。環境としては、有料チケットで観てもらうものが多いんですが、この雪まつりのステージはパブリックな場所で無料で、通りかかった人などいろんな人が観られる環境で行われている。
毎年テーマとして根底にあるのはデボさんと最初に打ち出した「平和への祈り」なんですが、来てくれたお客さんがみんな何かを持って帰ってくれている感じがしていて、それが演者さんにも伝わっていて。そのクリエイティブのスタート感が勝手に醸成されていくというか、みんながやりたいって共感できている環境がありますよね。それは毎年すごく感じることです。
出演している演者の喜びや感動がお客さんにも伝わるし、今年はそれが特に強烈に出てたのがおそらく舞台として成功した一番の要因かな。
品田さん、どうですか?今回はじめてご参加いただきましたけれども。
そうですね、雪まつりということで、雪の上で滑るんじゃないかとか状況について考えたことはもちろんあったんですけど、出演されている皆さんの集中力や、数少ない練習が1回ずつ終わるたびに「楽しい〜!」って言って帰られていて・・・すごく素敵な空間だと思いました。
私もアイヌの方々との関わりが5、6年くらいなんですけど、振りをつけてくれと言われたときに、どうしようって正直思って。ダンスの指導や振り付けは色々と経験しているんですけど、さきほど千代美さんがおっしゃっていたように、崩すといわれたときにどこまで崩したらいいかとか・・・みんなが覚えやすいようにわかりやすいものから繋げていけないかなと考えて、アイヌの踊りをベースに、ダンスとしての動きをつけていきました。
あと最後の『This is me』は、曲はもちろん素晴らしいし私も大好きな曲なんですが、どうしたらみんなが盛り上がって素敵なフィナーレになるのか、はじめは想像がつかなかったんですよね。でも実際に練習でやってみたときに、何より演者の皆さんが楽しそうに踊ってくれる。そしてみんなムービーを見て練習しているのが伝わって、それがすごく嬉しくて。
それで、自分の動きでも無限の8の字を書いて、そこから拡げて、みんなつながっているように表現しようとか・・・言葉が降りてくるように振り付けを固めさせてもらったんです。自分の中をいったん通して外に出すことと合わせて、演者さんのやる気が溢れ出ている空間だなと思っていました。
デボさんに今回のメンバーとやってみて、総合演出で取り組んで挑戦したことや変わったことなどがあれば伺いたいです。
コラボレーションについて、俺も長年、40年以上アイヌの古典舞踊を中心としてやってきて、俺以外の人のコラボも観てきたんだけど、なかなかアイヌの古式はコラボにはなりづらいんですよ。やはり古式のベテランが歌うとアレンジがきかないっていうのが正直あるし、伝統だから変えたくないっていうプライドもあるんですよね。それで、俺が今回のステージで目指したのは、本当のコラボってなんなんだろう、どうやったらクロスオーバーできるんだろう、っていうここ何年かずっと考えてたこと。
それで思い切って崩してみるのをまず歌からはじめたの。ちょっと大きなステージで雪があってお客様がわっといる状況では、シンセサイザーでもクラシックでもいいから、生歌だけでなくて土台となる音楽をバックに歌わせたいという想いがありました。
それで品田さんに、普段踊っている音楽を聞かせてくれと。今回4曲かな、それと阿寒のイコロシアターで行われている演目「満月のリムセ」の中で、一番軽やかにステップが踏めそうな音楽も合わせて。そこからが挑戦ですよね。伝統の歌をずっと歌っていたふたりのヴォーカルに、伝統のとおりに歌わないで、メロディーはこうだよ、で、こっからここまでを繰り返して歌って、って・・・誰もやったことなかったんじゃないかなあ。それをものの見事にふたりのヴォーカルが合わせてくれたんですよね。その様子を見て今度は、千代美さんが細かい振り付けまで考えてくれて。俺の仕事は大枠のフレームづくりだと思っているので、細かい中身についてはおふたり(藤岡・品田)にお任せにしたいと。でもコラボだから、アイヌの動きがアイヌの動きだけで成立するかといったらしない。品田さんに、どうやったらこれを崩してもう少しそちらに寄り添えるか、そしてそちらももこちらに寄り添えるかというところの、お試しの舞台でしたね。でも結果的に本当にうまくいったよね。苦労したでしょう?(笑)
藤岡・品田:(うなずき)どういたしまして(笑)。
相当リハーサルで苦労してましたけど、デボさんもその都度その都度指示するので大変でしたよね。
これね、当然なんだけど、思いついたらやらなきゃいけないの。
監督とかディレクションする人というのは出演者の責任も作品の責任もあるから、僕も経験ありますけれども、やってみて良くないところはギリギリまで直したいのはよくわかります。結果的に非難とか評価は出演している人に来ることだから、最後までギリギリの判断はあるだろうな、と見ていて思いましたね。だからこそ良いものになっていくというか。
みんなもよくついてきたよね。
うん、みんな素直に受け止めて。
自由に動けとか、羽持って羽ばたくなとか、難しいことを。(笑)
品田さんは伝統とか文化を崩す難しさはあったんでしょうか。
私の入り口は「伝統から入って崩す」。でもデボさんは「まず崩せ」という。入り口は違うけれども、真ん中で会うところはきっと一緒なのかなとは思っていたんですね。流れを考えながらつくっていくなかで、デボさんがジャッジをしてくれるから、うまく真ん中で会えたらちょうど良いかなと思いながらやりました。演者のみなさんが一番大変だったと思うんですけど。(笑)
このメンバーでこれまでに何か取り組みはされてきたのでしょうか。
いや、今回が初めて。
品田さんは阿寒のイコロシアターで舞台に立っていて、アイヌの踊りとはどういうものなのかを理解はしているからお任せして大丈夫っていう安心感は最初からありました。それと、踊りの演者さんは伝統的な舞踊しか踊らないできた人たちなの。だから言葉にはしなかったけど、崩せといっても、最後にはアイヌの伝統的な本質が残るっていうのがわかっている安心感があって、(品田さんに)壊してもらったら、やっぱりちゃんと残った。そこが実は自信があった根源なんですよ。
最後の大円団で踊る曲目が3つか4つあったんだけど、最初当てこもうと思っていた曲がリズムとかが合わなかった。何がいいんだろうと思ったときに今回本番に使った「エッサッ、ハンロー」のフレーズを思い出したのよ。これ合うわ、ちょっとやってみれって言ったら「今思いついたでしょ」って言われて。その場で曲をつくったんだったらかっこよかったけどね(笑)。
なんでこの場面でこの曲なの?ってアイヌの伝統の人は思うと思うけども、俺は舞台を成功させればそれでいいと思っていて、ちょっと無茶なところはあるんですよ。コラボっていうのはいかに自分を殺せるか。アイヌ民族の伝統を生かしつつ、どこまで砕けるかっていう、挑戦と実験が合わさった練習と準備だったんですよね。でも本番を観て、本当にやってよかった、もっとやれ、と思った。
品田さんのバレエやダンスがアイヌに合わせていく、吸収していく、というのはありましたか?
小さいころからダンスをずっとやっていて、古式の踊りを一緒に踊らせてもらう機会もありましたが、すごく独特というか、見様見真似でやると難しいんですよ。音楽もそうだし、どこで拍子とってるのこれ、みたいな感じだったりもする。
昨年針山さんがイコロにこられたときにも、屈伸のときの足のリズムが不思議だとおっしゃってましたね。
リズムとかカウント、呼吸でとるんですけど、どこにも何にもはまらないみたいな。下が正解なのか上が正解なのか、絶妙なところでとるから揃えるのも難しいと思うんですけど、アイヌの方々が古式を踊るとものすごく綺麗に揃うんですよね。これ、なんなんだろうなというのが正直ありました。
前段階の知識と経験があるところからのスタートだったのですが、中に入っちゃうと客観的にみれないのがもどかしいところですけど、出来上がったものを観て、どのくらい寄り添えたか、混ざれたか、交わすことができたか、同じ時間・場所・空間で、お客様も含めてどのくらいのことが伝わったかが、最後のフィナーレに感じることができた良い舞台でした。
踊りって振り付けの連続じゃないんだよな。内面からでてくるもの。それが今回、演者の皆さんは全部「喜び」で出てきてくれたのね。
それが今までの修行と経験の成果だなと。品田さんがおっしゃったように、みんなとつながっていく。
ちょっと前までアイヌの踊りって人と繋がらない踊りだったんですよ。下を向いて自分の世界に入り込むっていうのがアイヌの踊りの特徴でもあったんです。ただ、今回の舞台で表現するときには、格好よく言えば周りの人たちと魂が繋がるっていう方向にシフトして、それが昨日はうまくいったと思う。なかなか難しいんですよ。埋没型の人はどうしても下を向いて踊るし、それがまたいい踊りでもあるんだけど、お客様に観てもらうときには、やはり現代の舞台のように繋がることが大切でもあるんだよっていうことが、アイヌの世界にはないことだったから、苦労したんじゃないかなみんな。
コンテンポラリーもなかなか特殊ですよね。
コンテンポラリー自体、いろんな捉え方があると思うんです。私はベースがジャズダンスから入っていますが、作品によって表現の仕方を変えています。内面を表現する面ではコンテンポラリーを使わせてもらっていますが、動きという部分ではコンテンポラリーともやっぱりちょっと違くて、そもそも定義が何かといったらあまりない。認識が人それぞれではあるので、私にとってのコンテンポラリーは自分の内面を表現するもの。それは自分のダンスもそうですし、アイヌの皆さんとのダンス、表現ではすごく繋がるものがあるのかなとも思う。言葉で説明をするとなると難しいですね。
古式舞踊は古式舞踊で伝統として伝わっていくと思うんですが、それ以外の表現は、これまでアイヌの文化に興味や縁がない方々とつながるチャンスになりますよね。
品田さんの踊りを見て、コンテンポラリーやりたいなっていうアイヌの人も増えるかもしれない。私たち、普段カラオケとか行ったら突然アイヌの踊りをはじめたりするんですよ。(笑)普通の歌謡曲でバッタキウポポをやってみたり、輪踊り的なことをやってみたりとか。なので、違う音楽に合わせて踊るのはとても楽しかった。今回の『This is me』 は、最終的にみんな輪踊り的な感覚になりましたね。
今回のタイトル『ミナミナ』のとおりで、笑顔は自然とリズムと踊りで生まれてくる。デボさんと最初にこの雪まつりのステージを始めたとき、僕、歌や音楽を入れるのは大変だなと少し思っていたんですよ。雪祭りというステージなので気温の影響が大きく、楽器類、特に弦楽器は調律が取れなかったりするので演奏ができない。なので踊りをベースにしようということだったんです。でも、今回は強い楽器なのかわからないですが、トンコリを使っていただきましたね。
みんなが『ミナミナ』ー 笑顔になって繋がって、融合していったなぁと感じて、すごく良かったと思いました。
アイヌの踊りって、意識しないで踊る世界でもあるんですよ。自分たちがどんなリズムで踊っているかを伝統的に覚えちゃってるから、音楽理論で解釈するとか、西洋のダンスのように理解度を深めて・・・というやり方でアイヌの踊りをするっていう人はあまりいない。
アイヌのリズムって、リズムというよりも流れに近い。波なんですよね。
そういう理解の仕方をすると、こういう風にコラボ しましょうねって言っただけ。それを解釈してこういう風にやってごらんよって言える人がいないとアイヌはコラボ できないんですよ。こうすればうまくいくよっていう ヒントを演者にあげる作業がこの3人はできていた。
例えばリズム ひとつにしたって、1234のようなリズムとは違うのよ。カムイノミのようなリズムだったり、アイヌのおばあちゃんたちは細かいリズムを刻んでいるように歌うのさ。
単純なリズムではないこと、本当にそこに大切な意味がある。
歌を崩せっていうのはまた怖いことなんだけど、あのふたりから見るとおそらく知らないまま自分たちが細かいリズムで歌ってたから、高度な崩し方ができたと思う。
あとは、それを理解してる3人がいたからできた。知らずに崩すと全部壊しただけになっちゃうからね。
リハを通して大変だったことは?
全部大変でした。(笑)
ただ今回ついてたなと思ったのが、提供してもらった楽曲が別にアイヌの歌に合わせてつくったものじゃないんだけど、用意してたんじゃないかって思うくらいに合っていたんだよね。
めちゃくちゃマッチしていたので、つくってくれたんだと思っていました。
そうですね。「新己旧」という自身のプロジェクトをしているんですけど、昨年(2024年)東京で公演させてもらった時に、かとうなほさんという方に楽曲提供をしていただいたんです、阿寒湖のPeteさんにトンコリを弾いてもらったりして、そのうちの一曲がすごくマッチした。
撮影した YouTube をデボさんにまず見てもらって、こんな曲だったらありますよとご紹介させてもらったんですけど空気感が本当にイメージ通りだって言ってくださったのでよかったと思いました。
そういった意味だと、音でもコラボできたよね。
私にしてみたら、自分のプロジェクトでも使っていた曲だったんですけど、そこからまた違う見え方というか世界を見させてもらったなと思いましたね。
そういう意味では3回目にして初めてでしたね。
デボさんは他にもいろんなプロジェクトでやっていますよね。
俺はプロジェクトで2〜30年近く前に阿寒湖でやったタクサ踊り。メロディがハードロックなのに沖縄民謡だったの。それがめちゃくちゃ合っていて、またやりたいなっていう成功体験もあって今回に対する欲望が出てきてたので。
実はね、アイヌの世界では困ったことが起きて、古式舞踊が無形文化財になってから、古式という言葉に縛られて不自由になったの。要するに変えちゃいけないとなったんだけど、じゃあ200年前、300年前のアイヌはどうだったんだって。古典とか伝統って言葉すらないわけだから、踊っている人は次にこれを変えないで伝えなきゃいけないと思っていたはずがない、と俺は思ったのさ。
壊しすぎるのもなんだけども、毎日新しいことを積み重ねて振り向いたらそれが伝統だということなんだろうなと俺は思っていて。
それはその時々で楽しんで踊るからそれが伝統になるわけで、楽しくないなら残っていかなかったと思っているもんだから、実は伝統と古式 っていう言葉はこの世からなくして欲しいと思っているんだよね。
脱線しますが、今回デボさんもナレーションで日本語の要約を入れてくださいましたけど、カムイも日本語に要約されると「神」になりますが、そうじゃないんですよね。
共存するためにいらっしゃるもの、みたいなイメージなんですかね。
毎度悩むんだけど、カムイの説明をしようとすると3日かかる。
ありとあらゆるシチュエーションを表現して、いっぱい話を聞けばわかってくると思う。
3日特番で。(笑)
前に千代美さんと話していた時に、無理やりアイヌ語を日本語に訳そうとするからおかしなニュアンスになっちゃうんだって聞いたことがあって。
「命」ってアイヌ語がありますか?と言われると、うーん・・・無い。近いものだと「魂」になるかなとか、とにかく日本語に訳すのが難しい。
日本語を英語にするのだって難しいですしね。それと同じ感じのものはあるんでしょうね、表現として。
一同:(うなずく)
俺、それを説明するのによく使うのが、粋だねって、英語でなんて言う?
そしたらみんな、HotとかCoolとか言うけど、粋だねって言う日本人の文化的背景を含めて説明できてる言葉はHotとかCoolでもできてないよねと通訳さんに言ったら、その通りでございますと言われたよ。
日本文化で生まれ育った人間は、江戸っ子だねぇって言ったらわかるじゃん。ところがさ、トーキョーシティーボーイって言ったら台無しじゃん。
それと同じことがアイヌ語と日本語にも起きてるから、直訳じゃなくてニュアンスをどう伝えるかってのは毎回苦労する。だから昨日もカムイは神ってひと言で済ませちゃったよ。
あとはみなさん想像してくださいよ、と。
伝えようと思うとすごく説明くさくなっちゃうけど、じゃあ合ってるかどうかって言ったらニュアンスとしてはちょっと違うんだよな、みたいな。すごく難しいなって思うんですけど、そこを超えられるのって私のなかでは一緒に踊るとか、一緒に何かをする経験をしたときに、なんかわかんないけどみんな楽しかった、みんな笑顔だったみたいなことで。今回それがより強く感じられたと思います 。
客観的に観ていて、それは強く感じました。
最初と最後のナレーションがあったことで、20分の表現でストーリーがちゃんと観ている人にわかったかなと。最後 クを渡して、クリムセ(ムは小文字)を踊って終わるところとか、ナレーションがきちっと入るとできるんだなって思いました。
弓を渡すまでの所作とナレーションがぴったり合っていて。俺、実は適当に書いてあるもの読んだから、あんなに美しく合うのかって。それこそカムイの、神の思召しってやつかな。人間の限界超えてた、すごかった。
雪まつりで3回一緒にやらせていただいたんですが、毎回「一夜限りのスペシャルステージ」という紹介をしてるんです。毎回1回で終わるねってデボさんと話しますが、雪まつりのステージだけじゃなくて、せっかくつくった作品をまた活かせたり、ご縁でどこかでやっていただきたいというリクエストがあるともっと拡がっていくのかな。
アイヌにはいっぱい物語がありますよね。それをシリーズにしていくというのも良いと思いますし、表現の方法も踊りだったり歌だったり、プリズムも一緒にプロジェクションマッピングを入れて空間演出したいという想いももちろんあります。デボさんは次の展開を想像していたり、やりたい事はありますか?
俺は箱でやりたいよね。天候に左右されないところで安心して舞台を演じさせてあげたい。 雪まつりのステージはワンナイトでその価値がある。でも、続けてやるならもっと練り込んで、やっぱりツアーしたいね。
俺の中では昨日の映像をさっき見せてもらったら反省点だらけなんだ。もっとこうしたら良かった、こうできるというのはあるから、幅を広げて深く掘り下げて、もっと説得力がある楽しい舞台はできるだろうな。
で、この2人がいればできる。俺ひとりだったら大変だもん。(笑)
僕としては色んなご縁で繋がって、ビジネスとして関わらせていただいていることもありますが、せっかく一緒にやるなら縛りのない自由な環境でやりたいなという想いもある。デボさんはアイヌの文化継承している方々の中ではもしかしたら異質かもしれないけど、新しいことや異質なものをその時代の表現としてやってほしいと僕は思っていて、僕らもそこから発想を得てプロジェクションマッピングや空間演出だったりができるし、スタッフのやりがいもある。だからこの雪まつりのステージをやってるのはありますね。継続していくことに大変さはもちろんあるんですけど。支援していただける方がいたらぜひご連絡を。(笑)
(藤岡さんに)今後の展開はどう?
最低年1回で続けて行きたいですね。ちょっと早い時期から練って準備をして。
どこかで定期的に公演ができるとしたら精度は高くしていきたいし、表現の方法も広げていきたいっていうのはありますよね。せっかくこういうきっかけがあるので。
本当に素晴らしいプロジェクションマッピングでした。羽もかっこよかったし。
すごいねえ。
制作もじっくりやりたいんですよ、照明も音響も。
まあみんなそうだよ。
でもね、みなさんがアイヌの踊りってどういうものか理解してくれてるから、突然当て込んだ映像が合っていた。本当に調和してたよね。
イメージが共有されていて、それがマッピングで具現化されるというか。夕暮れだからちょっと色が違うんだとか、映像から時系列が見えたり・・・。
空間全体をプロデュースする強さですね。
通常、俺が関わるときは背景の色や映像とか照明に関してもうるさいんだけど、今回は何も言ってないの。任せきりでできる皆さんだと知ってたから。結果的に下手だったら来年文句言ってるけどね。
一同:(笑)
客席から見たかったです。ステージからの景色も素晴らしかったですけどね。
ね、本当。私もステージからお客さんを見てたよ。
いや、見せたかったよ。泣いちゃうよ。
僕はこういうプロジェクトが終わった後に、ものすごく反省して落ち込むんですよ。でも、場を提供する側として、皆さんがのびのびと満足できる環境でクオリティーが高いものを演じる場づくりをするという意味では、前よりはできたかなと感じました。天候や条件が良かったというのもあります。でもまだこれで終われないな、というのはあります。
そもそも演者サイドとしては環境がなかったらできないし、お客さんももちろんいなきゃというのはあるんですけど、最悪お客さんがいなくてもひとりでも踊れる。じゃあ何のために見せるのかというとお客さんのためだけど、アイヌの踊りのベースを考えると、神様に向かって踊っている。そして環境を整えてくださる人たちがいるから私たちは演じられるのであって、音響、照明、マッピング、何ひとつかけてもあの舞台は成り立たない。さらに練習を組んでくれたり連絡をまとめてくれるサポートなくしては、進めることも伝えることもできない。いつも舞台をつくったり関わらせてもらうとどうしてもスポットが演者に行くんですけど、演者は最高なパフォーマンスをしないとスタッフも報われないよって毎回思うんです。本当に手厚いサポートをしていただいたなと思ってます。
8丁目のステージはHTBさんのお力添えで環境をつくることができて、今のこの収録場所も HTBさんの場所をお借りしています。我々のプロジェクトをご理解くださって本当に感謝しています。
技術もプリズムだけではなくて、会場では常駐の共立のスタッフさんにもご協力いただいて。前日の夜もリハーサルやチェックを手伝ってくれたりアドバイスをくれたり本当に温かい環境でできているので、次回チャンスがあればより一層いい環境でみんなでやりたいと思いますし、別の場所でも面白い展開になるのかなと思います。
今年も本当に感動のステージができました、ありがとうございました。来年も是非このプロジェクトを形にしていきたいと思います。また HTBさんも本当にありがとうございます。スタッフのみなさんにお力添えいただいてこのプロジェクトは完成しています。
僕らが発信していることに賛同していただける方々や、周りを一緒につくっていける環境の輪も広がっていけばいいなと思います。今日はありがとうございました。
一同:ありがとうございました!
スペシャルパフォーマンス『ミナミナ』
【プロジェクト記事】
https://www.eizou.com/projects/2595/
【事前対談】
スペシャルパフォーマンス『ミナミナ』へ向けての想い
https://www.eizou.com/dialog/2694/
Ainu culture inheritor / Dancer / Producer
AKIBE DEBO
アイヌ文化継承者/プロデューサー
秋辺デボ(秋辺日出男)